第96回は、2024年9月27日発刊の『2024年 EV用樹脂の開発動向と市場展望』です!
EVに使用される次世代樹脂を開発するメーカー国内8社と海外8社を対象に、各社のEV用樹脂事業について調査・分析した当レポートについて、弊社リサーチャーの中津啓揚に調査のポイントをインタビューしました!
中津啓揚 プロフィール
リサ・リューション事業部 リサーチグループ Chemical
中津啓揚
—Profile—
入社前まで、名古屋の自動車調査会社や東京のビジネス情報コンサルティング会社に勤務。
TPCに入社後は、生産財チームでケミカル分野の調査を担当している。
―なぜ、今回この調査を実施しようとしたのですか?
中津:自動車産業は気候変動対策や排出ガスによる健康被害などによりICE(内燃機関)車からEVへのシフトが進んでいます。欧州では、2035年までにガソリン車の販売が禁止される予定で、EV市場は中長期的に飛躍的に成長することが見込まれます。
そして、EV化の進展に伴い、自動車部品に対する技術的要求は大きく変化しています。従来のICE車における部品とは異なり、EVではバッテリーの搭載などから、軽量化、耐熱性や絶縁性の向上といった特有の要件が求められるようになりました。このため、樹脂メーカーには、これらの新しいニーズに対応した革新的な樹脂材料を開発することが不可欠となっています。
こうした現状から、EV市場の動向、また国内外の樹脂メーカーの戦略について調査する必要があると感じていた中、実際にクライアント様からの要望もあり、今回このテーマで調査を実施しました。
―今回の調査で、何か新たな発見はありましたか?
中津:2023年以降にEV市場は、各国政府による補助金政策の縮小などにより減速し、報道などで生産計画の中止が大きく取り上げられていますが、中長期的に成長することが確実なことから、自動車メーカーの投資や工場設立に大きな変化はなく、また、樹脂メーカーの研究開発や生産能力拡大の動きも活発化していることがわかりました。
また、自動車のEVシフトをチャンスと捉え、EV用樹脂市場には、異業種を含め部品・材料の製造に参入する中小メーカーも多く、価格競争も激しさを増しています。
既存の樹脂メーカーに対しては、旧来の組織体制を見直し、市場の変化に迅速に対応できる組織づくりが求められています。今回の調査した企業でも、販売組織を再編する企業が多く見られ、さらに東洋紡、Lanxess、SolvayなどがEV用樹脂事業をスピンオフして新会社を設立するなど競争力の強化を図っています。
―今回EVで使われる樹脂をテーマにした調査とのことですが、現在のEV用樹脂メーカーの課題は何だと考えていますか?
中津:国内の樹脂メーカーの主な取引先である日本の自動車メーカーが、EV市場において出遅れを指摘されている中、樹脂メーカーは、市場での一定のシェアを確保するために、EVの普及が進む欧州や中国において新たな顧客を獲得し販路を広げていく必要があります。これを実現するために、現地の自動車メーカーや部品サプライヤーとの連携を強化し、EVに適した高機能樹脂の提供体制を整備することが求められます。
また、欧米の樹脂メーカーが、投資家の意向を反映し、リサイクルプラスチック(PCR)やバイオプラスチックの製品展開を積極的に進めているのに対し、国内メーカーも進めてはいるものの、製品ポートフォリオが手薄な印象がありました。
2024年以降は、EV販売が短期的に停滞する可能性があるほか、中国の新興メーカーとの激しい価格競争に巻き込まれるリスクも存在します。こうした状況において、国内樹脂メーカーにとっては、製品競争力の強化、製造コストの削減といった課題に取り組み、生産体制の維持と利益確保を両立させることが重要です。
―今回の調査のここに注目してほしい!というポイントがございましたら、是非ともお聞かせください。
中津:今回は、これまで取り上げたことのない製品群での新規調査となりますが、EVで使用される樹脂の世界市場規模とメーカーシェアを算出しており、当該製品群の自動車産業における規模感をつかむことができると思います。
このほか、BASFなど海外の大手メーカーを多く取り上げて、その研究開発や生産計画の動向をまとめていますので、樹脂メーカーのみならず部品メーカーで海外展開を検討されているご担当者様にとり、ベンチマーク・取引先を確認する上で参考になる資料となっております。
また、これまでより一層の軽量化が求められるEV向けの材料・部品において、各メーカーがどの樹脂に着目し開発を進めようとしているのか、競合企業あるいは取引先企業、さらに、業界の動向を把握する意味でもお役立ていただけます。
―本日は貴重なお話しありがとうございました。
さて、今回インタビューした「2024年 EV用樹脂の開発動向と市場展望」レポートは絶賛発売中です。ご興味がございましたら是非とも弊社にお問い合わせくださいませ。