TOPICS

2024.10.09

リサーチャーに聞く!#97 『2024年 世界の核酸医薬品市場』調査のポイント

PRESS

MEDICAL PHARMACEUTICALS

第97回は、2024年7月23日発刊の『2024年 世界の核酸医薬品市場』です!
核酸医薬品の製品展開、新薬開発状況、市場規模、今後の市場予測など全般的に調査・集計した当レポートについて、弊社リサーチャーの森惠佑に調査のポイントをインタビューしました!

 

森惠佑 プロフィール

リサ・リューション事業部 リサーチグループ Chemical
主任
森惠佑

—Profile—

入社当時は、医療用医薬品分野でマーケット調査を担当。
次に、ケミカル分野でのマーケット調査。その後は、再び医療用医薬品分野での患者調査に専従。
ケミカル分野と医療用医薬品分野を行きつ戻りつし、現在は双方の分野で調査業務を行う。

 


―今回、核酸医薬品市場の調査を実施した経緯を教えてください。

21世紀は、抗体医薬品が市場で支配的なモダリティとなった時代で、2020年においても医療用医薬品の世界売上高トップ10の半数は抗体医薬品が占めていました。
一方で、2010年代後半から抗体医薬品に続く新たなモダリティとして核酸医薬品が注目されるようになり、2020年末にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対するmRNAワクチンの誕生に至ったことで、一般的な知名度も高まりました。
世界初のmRNA医薬品の開発成功という技術的達成の面でも、速やかにパンデミックに対するワクチンが作製されたという人命に対する貢献の面でも画期的な成果でしたが、mRNAワクチンの1つ「Comirnaty/コミナティ」は2021年の医療用医薬品で世界売上高1位となるなど、市場性においても絶大なインパクトがありました。
こうした流れに連動して、弊社でも2020年に核酸医薬とペプチド医薬を調査対象とした「世界の中分子医薬品市場」、2022年には核酸医薬に特化した「世界の核酸医薬品市場」を発刊してきた経緯があります。そこからさらに2年後の今般、mRNA医薬品登場の衝撃が落ち着き、従来のアンチセンス医薬品やsiRNA医薬品などと総合して客観的に市場性を評価できるようになった頃合いと判断し、「世界の核酸医薬品市場」をリニューアルすることを決定しました。

 

―核酸医薬品は注目を集める新たなモダリティと言われましたが、核酸医薬品自体は前世紀から市場にあるものと聞いています。またmRNA出現前はどのような理由で注目を集めていたのでしょうか。

確かに核酸医薬品自体は、1990年代後半には市場に登場しています。ただし、初期製品は大きな市場を形成せずに販売終了に至っており、現在日本、米国、欧州で販売されている製品はすべて2016年以降に承認されたものです。
mRNA出現前は、アンチセンス、siRNA、アプタマーなどの作用を持つ医薬品が主なラインアップで、これらは疾患の原因となるタンパク質の産生を抑制したり機能を阻害したり、必要なタンパク質の生成を促進するといった働きをします。
細胞内分子を標的とすることが可能なため、これまでに有効な治療法がなかった筋ジストロフィーなどの難病・希少疾患に対応できる可能性があるとして注目を集めました。
その注目に応える成果の1つが2016年発売の「Spinraza」で、世界初の脊髄性筋萎縮症治療薬として、核酸医薬品では最初のブロックバスター(年間売上高10億ドル以上を達成した医薬品)となり、市場拡大に寄与しています。
その後は、mRNAワクチンとして著名な「Comirnaty/コミナティ」および「Spikevax/スパイクバックス筋注」が投入されることになります。実質的な発売初年度となる2021年の売上高は両剤あわせて500億ドルを超え、核酸医薬品市場は爆発的に拡大しました。

―今回の調査では、注目に値する市場の動きはみられましたか。

「Comirnaty/コミナティ」「Spikevax/スパイクバックス筋注」は、2022年に2剤合計で580億ドルまで拡大したのち、感染状況の落ち着きから各国政府への納入量が急減し、2023年には前年の1/3以下となりました。
一方、これまで希少疾患の治療を主としてきた従来の核酸医薬品に関しては、より患者数の多い疾患を適応とした製品も成長が目立つようになりました。
2020年末発売の高コレステロール血症治療薬「Leqvio/レクビオ」や2023年発売の加齢黄斑変性治療薬「Izervay」がそれにあたります。
市場規模ではいまだmRNAワクチンが支配的ではあるものの、伸び率ではこの「Leqvio/レクビオ」「Izervay」などが圧倒していて今後目が離せません。
なお、mRNAワクチンに関しても、次世代mRNA(レプリコン)として2023年末に世界初承認となったCOVID-19ワクチン「コスタイベ筋注」や、COVID-19以外の適応を持つ初のmRNAとして2024年に承認されたRSウイルスワクチン「mRESVIA」など特徴的な新製品が揃いつつありますので、引き続き注目です。

 

―現在とこれからの注目すべき動きがよくわかりました。では、さらなる将来の市場についての注目ポイントはいかがでしょうか。

将来の医薬品市場は現在の開発パイプラインによって形づくられます。今回の調査では、より患者数の多い疾患を対象とする新薬の開発が増えてきていることが判明しています。
例えば、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)や「Izervay」と同じく加齢黄斑変性を適応とするアンチセンス、siRNA、アプタマーの開発テーマが目立ちます。
また、mRNAについてはCOVID-19以外のインフルエンザやRSウイルスといった感染症ワクチンの開発が進んでいるほか、癌ワクチンの開発も盛んです。
もちろん、希少疾患を適応とする開発テーマもアンチセンスを中心に引き続き多く確認できており、将来的にはここまで挙げた疾患領域での市場規模拡大が見込まれます。

 

―ありがとうございます。核酸医薬品で治療できる疾患領域は今後一層拡大していくということですね。最後に一言お願いします。

当資料は核酸医薬品の世界における製品展開、新薬開発状況、市場規模、今後の市場予測など全般的に調査しています。核酸医薬品の現状と今後の道筋を把握する一助となるかと思いますので、事業を展開している企業様も参入を検討している企業様も、現在はまだ関心があるという程度の企業様も、当資料のご購入やご試読をどうぞご検討ください。

―本日は貴重なお話しありがとうございました。
さて、今回インタビューした「2024年 世界の核酸医薬品市場」レポートは絶賛発売中です。ご興味がございましたら是非とも弊社にお問い合わせくださいませ。

 

 

『2024年 世界の核酸医薬品市場』